変形クラッチ『GIOVANNI』の正体について
《クラッチバッグは何故四角いのか…》
人の持ち物も時代と共に変化していく。携帯電話や財布、タブレットなど、大きさや形も様々。
鞄という字は「革で包む」で成り立っているので、何かを包み入れるのが鞄の大前提。
”自分が持つ財布とスマホが入るバッグをジャストで作りたい”という気持ちから作品づくりに取り掛かった。
出来るだけ薄く、かつ何処にもないデザインで…
《マニカカミーチャ(いせ込み)》
レザークラフトをしている人やレザー製品が好きな人なら分かると思いますが、ほとんどの製品は切り口を真っ直ぐ整えコバを磨く。
レザークラフトでよく使用される革はタンニン鞣しのレザー。
僕たちが扱う姫路のレザーはタンニンとクロムを含んだコンビ鞣しのレザー。
柔軟なレザーの特徴を生かすにはどうすればいいか…
マチなしで外縫いなら中に入るものが薄いモノに限られる。
厚みのあるモノならファスナーや本体に歪みが生じる。
外縫いで膨らみを持たせるには…
そこで思い付いたのが『マニカカミーチャ』
スーツなどの袖付けの使用で「いせ込み」という縫製がある。
それをこの鞄づくりにも応用できないかと…
表と裏のサイズを数ミリ変え、周りを合わせていくと独特な”うねり”が生まれた。
これにより、モノを入れた時のシワが目立たなくなる。
何故なら元から「歪ませている」から。
《歪みの妙》
一面をいせ込むことで膨らみを確保出来たが、周りが真っ直ぐだとどうもしっくりこない。
ならば周りもうねりのあるフォルムにすることで、全体的に歪だが妙にハマった。
整合性を取るためファスナー周りも歪ませている。
人は均衡のとれた形を美しいと感じ、そこに囚われる。
「レザークラフトとはこうあるべき」
そんな概念から如何に解き放てるか…
周りの縫製は糸ではなくレースでかがることによって、本体の歪さを強調しながらも引き締める。
レザーの軟度・いせ込み度・編む強度・配色
それぞれが影響し合い、絶妙なフォルムと表情が出来上がる。
不均衡を創造し、違和感を受け入れる
それこそが…『GIOVANNI』の正体
あなたの”La storia(物語)”と共に…