ひらめきの十二星座シリーズ~⑧天秤座~
ひらめきの十二星座シリーズ・其の⑧『天秤座』
ギリシャ神話における天秤座は、女神アストライアがヒトの善悪を計るために持っていた天秤に由来する。
神と人が共存する平和な世から人々が徐々に欲を持ち始め、最終的には戦争を起こしてしまう。
そんな人間界に愛想を突かし神々は天上界へと帰ってゆくが、アストライアだけが最後まで残り、正義を訴え続ける。
だがヒトは一向に変わる気配はない。
やがてアストライアも地上界を離れ、天空に帰り、その天秤が今でも夜空から見守っている。
そんな天秤座なのですが、最もイメージしたのは「バランス」。
このバランスをどうやって表現するかが今回のテーマになる。
今までの作品は、そのフォルムをセンターに取り込む造形だったが、あえてその部分を土台とし、「立たせる」ことでそのバランスをカタチにしたかった。
天秤=シンメトリーというイメージがあるが、あえてアシンメトリーに切り出すことでその概念を封印しておく。
先ずはベースの部分から貼り合わせながら形作る。
芯になる部分をどうやって固めれば上手く立ち上がり、バランスを保てるのか…
そんなことを考えながら試行錯誤していたが、ある瞬間、その思考が止まった。
自分でイメージしていた状態にならないかもしれないという感覚が徐々に湧き上がり、作るのを止めた…
そして一か月ほど経った後、この天秤座が途中だったことにふと気づいた。
何かを創り上げていけばいくほど、そこに入り込んでゆく。
月日が経ち、別の視点から物事を見てみると、また違ったルートが見えてくる。
自分がイメージしたものをどこまで追及したところで、誰にもその苦悩は分からない。
肩の力を抜き、思うままに生み出されたモノを自分がどれだけ許容できるか。
またそこに向き合うことで、この造形はカタチを得ることが出来た。
一度諦めたことにより、また新たな気持ちで挑むことで見える世界がある。
全てが違うから美しい。それを受け止め包み込む人々。
こんな世が来れば、再びアストライアも舞い降りてくるかもしれない…
そんなことを感じた、第八弾「天秤座」でした。
次回は「山羊座」になります。